建材卸・住宅資材卸のM&Aでは、決算書に加えて「取引と納品を引き継いだ後も続けられるか」を説明する資料が重要です。得意先の数や在庫金額だけでは、商売の強みも負担も伝わりません。本記事では、経営者が準備したい資料を、得意先・メーカー口座・与信・在庫・配送網の五つに分けて整理します。
1.得意先は売上・粗利と取引継続の条件を整理する
得意先別に直近3期程度の売上と粗利を並べ、上位先への集中度、継続受注と単発案件の違いを確認します。工務店、リフォーム会社、販売店などの属性に加え、新築・改修の構成や主な商材も記載すると、地域の需要との関係を説明できます。
例えば、売上が大きくても小口の緊急配送が多い先と、定期便でまとまった注文が入る先では、対応の負担が異なります。粗利だけでなく配送頻度も添え、取引を支える条件を伝えましょう。
- 経営者が直接受注する先と、営業担当が対応できる先を分ける
- 値引き、返品、現場直送など、得意先ごとの例外ルールを記録する
- 進行中の見積もり・受注残・クレームを一覧にして担当者を付ける
「長年の付き合い」という説明に、受注履歴と引継ぎ担当を添えることが、関係を具体的に示す第一歩です。
2.メーカー口座は仕入条件と契約確認を分けて進める
メーカーや一次卸の口座は、取扱商品、仕入価格、支払条件、リベート、最低購入量などを一覧にします。特約店・指定店の名称だけで判断せず、契約書、覚書、条件通知書をそろえ、実際の運用との差も確認してください。
リベートが粗利に含まれる場合は、対象期間と達成条件を明示します。経営者個人の交渉で得た条件や、特定担当者との関係に依存する調達も、通常条件と区別して説明します。
口座や契約を同じ条件で継続できるかは、一律には判断できません。検討する譲渡方法に合わせ、契約上の通知・承諾条項、保証や担保の扱いを専門家と確認します。そのうえで、仕入先への説明時期と確認担当を決め、継続を確認済みの事項と未確認の事項を分けて管理しましょう。
3.掛売り・与信は売掛金の年齢と例外対応を見せる
売掛金は残高合計だけでなく、得意先別の支払期日と入金実績を照合します。期日前、期日超過、分割回収中などに区分し、遅延理由、先方との合意内容、最終入金日を記録してください。請求内容の争いと単純な入金遅れも分けます。
与信枠、枠を超えた出荷の承認者、出荷停止の判断、回収担当を一覧にすると、経営者の判断に頼っている部分が分かります。仕入代金の支払いより売掛金の回収が遅い取引は、月次の資金繰り表と合わせて説明し、事業継続に必要な運転資金を確認します。
4.在庫は帳簿金額と販売・処分の見通しを照合する
在庫台帳には品番、数量、取得単価、保管場所、最終入出庫日を付け、実地棚卸しと突き合わせます。定番品、受注案件用、長期滞留品、廃番品、破損品を区分し、返品可能な商品は仕入先の条件も添えます。
「動いていないから全て不要」「帳簿に載っているから全て売れる」とは決めず、販売予定、対応する受注、返品・処分の選択肢を整理します。預かり品や委託品は自社保有品と分け、在庫金額の対象を明確にしましょう。
倉庫・置き場については、所有・賃借の別、契約期限、賃料、設備の状態を確認します。長尺材や重量物の保管場所、荷役機器、荷受けから積込みまでの動線も、現場確認で共有したい項目です。
5.配送網は対応力と一便当たりの負担を示す
配送エリアの地図と配車表を用意し、自社便・外注便、定期便・緊急便、店舗納品・現場納品を分けます。繁忙期と通常期の配送件数、走行距離、拘束時間、外注費を並べると、納品対応を維持するための人員と費用を検討できます。
狭い進入路、時間指定、荷下ろしの応援、現場担当者との連絡方法など、運転者が覚えている情報は配送手順に落とし込みます。車両の所有・リース、点検履歴、代替要員の有無も確認し、担当者が休んだ場合の運用まで説明できるようにします。
6.最初にそろえる資料と開示の進め方
すべてを一度に完成させる必要はありません。まず次の資料を同じ基準日でまとめ、不明点には確認担当と期限を付けます。
| 分野 | 準備する資料 | 確認する項目 |
|---|---|---|
| 得意先 | 得意先別売上・粗利、受注残 | 集中度、継続性、担当者依存 |
| メーカー口座 | 契約書、仕入条件・リベート一覧 | 継続条件、通知・承諾の確認状況 |
| 与信・回収 | 売掛金明細、入金履歴、資金繰り表 | 期日超過、与信例外、運転資金 |
| 在庫・倉庫 | 在庫台帳、棚卸表、賃貸借契約 | 数量差異、滞留理由、保管条件 |
| 配送 | 配車表、配送実績、車両一覧 | 採算、人員、現場ごとの納品条件 |
初期段階では得意先名をコード化するなど、必要な情報に絞って共有します。実名や契約書の開示は、秘密保持の取り決めと開示先・目的を確認しながら段階的に進めます。資料は価格を自動的に決めるものではありません。強みと未解決事項を同じ資料で説明し、買い手と引継ぎ条件を具体化するために使います。
業種全体の確認事項は建材卸・住宅資材卸のM&A・事業承継もご覧ください。自社の資料整理や引継ぎについて相談する場合は、売却・事業承継の相談フォームをご利用ください。

